平成25年11月、 理学療法士を目指して専門学校に通っていた大野さんが自死をしました。当時、39歳でした。
大野さんは、平成22年、理学療法士を養成する専門学校である近畿リハビリテーション学院に入学、平成25年11月から辻クリニック(大阪市住吉区)で実習を受けていました。 大野さんは社会人経験を経て、 一生続けられる人の役に立つ仕事ということで理学療法士を目指し、一所懸命に技術・知識の習得に努めていました。
ご遺族は、大野さんが専門学校での最終学年時に、実習先のクリニックで受けたいわれなき叱責、意図的な無視、衆人面前での罵倒等に苦しみ、さらに膨大なデイリーレポート(宿題)に連日追われ、心身を疲弊し自死に至ったとして、近畿リハビリテーション学院及び実習先クリニックに対して安全配慮義務違反等に基づく損害賠償請求を命日の直前にあたる平成26年11月28日に大阪地方裁判所に提訴しました。
実習中のハラスメントは医療系専門学校生の間では稀なことではないようで、大野さんは、亡くなる前年の実習中にも過度の心理的負荷から失踪したことがありました。近畿リハビリテーション学院は、当然、そのことを知っており、辻クリニックでの実習中にも大野さんが窮状を訴えるメール等を送っていたにも拘わらず、適切な対処を具体的に講ずることがなかったため、このような取り返しの付かない被害が生じてしまいました。
大野さんの死後、ご遺族は彼だけでなく実習生が実習中に過酷な状態に置かれ、実習期間中の失踪や自死が他にも起きていることを知り、大野さんだけの問題ではない、二度とこのような悲劇が繰り返されないようにとの思いで裁判を起こされました。
労働者ではないため、過労自死事件のように労災保険の適用がありません。また、「専門学校」という本来教育をする場ではあるものの医療関係機関ということで監督庁は厚生労働省で、教育の場としての適切な指導・監督がなされていないのではとの疑問が生じます。
本件の被害救済は当然のことながら、こういった背景にある問題にも意識を持ちながら今後の訴訟活動に取り組まねばと考えています。
この裁判を支援する会が作成されたホームページ「理学療法士学生の実習問題を問う ~近畿リハビリテーション学院と辻クリニックに対する裁判を通して考える~」 (http://www.ptjisyu.com/)が近日中に アップされ、今後の裁判予定等が掲載されますので、みなさまも裁判の動向に関心を持っていただければ幸いです。