(平成28年11月25日大阪地方裁判所判決)
百貨店や展示会場への什器レンタルサービスを行っている株式会社山元という会社にアルバイト従業員として勤務していたKさんが平成24年4月に不整脈により38歳の若さで亡くなりました。当時、生まれて1歳10ヶ月の息子さんと妻が残されました。亡くなる直前1ヶ月は100時間を超える時間外に従事しており過労死であるとして労災認定は速やかに認められました。
会社に対する損害賠償請求訴訟の判決が平成28年11月25日大阪地方裁判所第3民事で言い渡され、遺族2人に対し、長谷部幸弥裁判長は長時間労働による過労死と認定し、同社に約4800万円の支払いを命じました。
訴訟で会社は、Oさんの労働実態が労基署が認めたような長時間には及んでいなかったという点の他、Oさんはアルバイト従業員でノルマも課されておらず、いつどの現場の仕事をするのかは労働者自身が自由に選択できるのであり、正社員と同様の安全配慮義務を負うないとして、法的な点でも激しく争っていました。
この点について判決は、「「亡Kが一定期間継続して就労することを前提として、亡Kから具体的な作業の申込みを受けるにつき、作業に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積してその心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を負っていたものというべきである。すなわち、被告は亡Kの労働時間数及びその他の労働形態等(稼働する時間帯、現場ごとの作業時間等)を把握するとともに、労働時間数等において亡Kに過度の負担をもたらすことのないよう調整するための措置を採るべき義務を負っていたものであり、具体的には、亡Kによる申込みの前においては労働時間数等を適切に調整するよう、また、申込みの後においても他の日時、時間帯に変更等するよう指導するなど、亡Kの労働状況を適切なものとするための措置を採るべき義務を負っていたものというべきである(なお、被告においてそのような措置を採ることが困難であったとは言えない。)。 」として、原告の主張
をほぼ認める判断を下しました。
その上で、死亡前1カ月の時間外労働が80時間を超えていたうえ、死亡1週間前には午前3時まで働き、約4時間の空き時間を挟んで翌日の午前0時ごろまで働くことがあったと指摘。「死亡直前の数日間はいわば昼夜を問わず働いている状態で、身体に重大な負荷が生じていた」として業務と不整脈との相当因果関係を認めました。
ただし、Kさんが「その従事する作業についてある程度主体的に選択し得る立場にあったともいえるのであって、亡耕二が作業に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なう事態を避けるためには、自らにおいても業務量を適正なものとし、休息や休日を十分にとることにより疲労の回復に努めるべきであったことは否定できないから、亡耕二の死亡による損害の全額についての賠償を被告に命じるのは、当事者間の公平を失し、相当とはいえない。そこで、民報722条を適用ないし類推適用して、原告らが被告に対して賠償を求め得る金額(ただし、損益相殺による減額前の金額であり、弁護士費用を含めない。)からその30%を控除するのが相当である。」として3割の減額をしました。
勤務実態の事実も会社が激しく争う中で、労働実態の事実認定及びアルバイト従業員の安全配慮義務の具体的内容について非常に公正な判断をしていただいただけに、この3割もの減額は納得しがたく、控訴審においてこの点も判断を再考してもらうべく、原告も控訴をしました。
高裁でもよいご報告が出来るよう引き続き、尽力せねばと思っております。
、同社での男性の勤務歴が15年以上に及び、現場でも相応の役割を果たしていたことを重視。会社側には、正社員と同様に男性の健康に注意すべき義務があったと認定した。一方で男性にノルマはなく、出勤日も自分で選択できたことから、損害額の30%を過失相殺した。